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焼酎を訪ねて九州山間地を行く
人吉盆地は名水の郷
photo 翌朝、福田酒造商店が仕込みに使っているという古仏頂水源を訪ねた。もう9時を過ぎているというのに人吉は霧がかかったままだったが、わずか10分ほどの距離というので構わずに出かける。
 田圃の間の細い道を奥へ奥へと入っていくと球磨川の支流の傍に水源はあった。人吉の水道局の管理下にあって中には入れないが、山の緑が蓄えた湧き水があちこちからチョロチョロと流れ出ていた。要は人吉の水道水はナチュラル・ミネラルウォーターにほんの少し手を加えただけなのである。どおりで今朝飲んだホテルの水がおいしかったはずだ。
 さて、今日はここから宮崎の高千穂まで車で移動である。どのルートを使うか迷った末、平家の落人が開いたという椎葉村を抜けることにする。深い山の中にあるこの村は、今も日本で唯一焼畑農法が残る。曲がりくねった道は国道とはいえ車が自由にすれ違えない。昨夏の台風の影響で、ところどころ通行止めがあり、さらに細い道に迂回させられる。走り始めてすぐに後悔したが後の祭り、日が暮れないうちに安全なところまでたどり着きたいとだけ思い、休憩もせずにひたすら走ることとなった。
photo photo

ニューフェースそば焼酎
photo 昭和29年に創業し、昭和51年からそば焼酎を製造し始めた神楽酒造は、高千穂町を抜けた天岩戸神社の近くにある。球磨で訪ねた福田酒造商店や林酒造場よりも規模は格段に大きい。
 隣町の5ヶ瀬村の出身という寺本正也専務にお話をうかがう。高千穂一帯は昔からそばや稗や粟などの雑穀をよく食べていたところで、高価な米の代わりにこれらの雑穀で酒をつくり始めたのだろうという。特にそばは身近にあり、ご本人が子供の頃はおやつといえばそば粉を熱湯で練ったそば掻ばかりだったそうだ。そして、広く知られるこの地方の夜神楽は、娯楽の少ない当時、一大イベントだったのだと。今でも夜神楽は生活に浸透しており、寺本専務ご自身、つい最近、地元の夜神楽の世話役の当番をされたとのことであった。
 神楽酒造のそば焼酎は、白麹菌の米麹でつくった一次醪に、破砕して蒸したそばと副原料の麦を加えて二次仕込みをおこなう。そばの醪は粘りが強く、また、吸水などが微妙で酒づくりにとって簡単な素材ではない。さらにでんぷん価が低いため酒の収量も低い。そば焼酎がつくられるようになったのが、比較的新しい理由はこのへんにあるのであろう。
 そば焼酎は、球磨焼酎や薩摩の芋焼酎のような伝統的なものではない。高千穂で生活に密着していたそばという素材を生かして、新しい焼酎をつくろうとしたなかで誕生した酒だ。そして、そのさわやかな風味が評価され、麦や米や芋と並ぶ焼酎として、地位を確立したのである。


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