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焼酎を訪ねて九州山間地を行く
始まる前の腹ごしらえ
photo 午後5時。黒口神社に神様をお迎えにいった一行が戻ってきた。仮面をつけて夜神楽の会場に、音曲に合わせて舞いながら入ってくる。いよいよ夜神楽の開幕である。「冷えますから暖かい格好をして、食べ物を用意していくといいですよ。それからご神前として焼酎を2本、いや、現金を寄進されたほうが喜ばれるな。焼酎はいっぱい集まってきますからね。金額は2000円でいいでしょう。夜、舞の間の休憩でまかないとして煮物や酒が振舞われますから、ご覧になるのでしたらそうしてあげてください」。役場の観光課で当夜の夜神楽の詳細を確認すると、そう助言してくれた。
 道に迷いに迷った末にようやく会場を見つける。谷あいに開けた田んぼの真ん中、周りには何もない。受付のあるテントにご神前を納めに行くと、すでに一升瓶の焼酎を2本しばった奉納品が山と積まれていた。「味気ないようだけれど、アドバイスのとおりお金にしておいて正解だったな」と思う。
 「まかないが用意できました。舞人の皆さん召しあがってください」。神楽が始まるのかと思っていると、世話役が神楽を舞う地元保存会の方々に食事を勧める。神楽を見に集まった地元人はかって知ったもので、持参した弁当を広げ始める。夜神楽はほんとうに夜通し続く。33の神楽を順に舞って、終わるのは明朝である。たしかにしっかりと食べておかないともたないだろう。舞人たちのテーブルには野菜の煮物や漬物が並ぶ。もちろん焼酎も出る。一升瓶を抱えた世話役が、舞人の湯飲みに順番についで回る。

カッポ酒で暖をとる
photo もう5〜6番進んだろうか。舞始めてから2時間近くが過ぎている。単調な旋律とリズムを繰り返すお囃子、舞も同じような動作が続く。舞人は酒のせいか、それとも高揚しているのか、みな赤ら顔である。
 しばらくすると曲調が変わって舞が一区切りした。「みなさん召し上がってください」と世話役の声があり、台所から煮物が運ばれ、舞人や観客に配り始める。庭の焚き火で暖められていたカッポ酒も振舞われる。カッポ酒は1mほどの節を抜いた青竹に焼酎を入れ、そのまま焚き火に突き刺して暖めたもの。受けるカップも竹製。日が落ちてから増した寒さで身体は冷えている。温かい酒はうれしい。
 焚き火で暖をとっていると舞人の1人がやってきた。44歳の彼は小学校6年生の時に神楽を始めたという。最初の練習は口太鼓。これは、お囃子を耳から聞こえるまま音にして、口で何度も言ってみること。先輩からこの舞の曲はこう、あの曲はこうと教えられ、暇さえあれば「トントンカカカ カコカコカカカッ」などと繰り返して覚える。「今は太鼓も笛もたくさんあるから初めから楽器で覚えますけどね、昔はそうじゃないから口で覚えたんですよ。楽譜もない。身体で覚えて身体で伝える。そうしてずっと伝わってきているんです」。
 そこへ、横で話を聞いていた60歳を過ぎた年恰好のおばさんが、「昔は夜神楽が楽しみでねえ」と話し始める。高千穂の夜神楽は11月下旬に始まり、翌年2月ごろまで地区ごとに順に開かれていく。この会場は小さな公民館のような場を使っているが、地区によっては昔ながらに自宅を開放して催される。かつては夜神楽が開かれるといって親戚が集まり、ご馳走を食べ、焼酎を飲み、夜遅くまで騒いだ。子供たちには、いや大人にもたいへんな楽しみだったのだそうだ。

夜明けとともに世界が変わった
 いったん引き上げて翌朝6時前に夜神楽の会場を再訪。夕べ60〜70人いた観客は15人ほどしか残っていない。毛布やシュラフに包まりうとうとする表情にはさすがに疲れが浮かんでいる。
 舞人も顔が青白くやつれたように変わっている。赤ら顔でにこやかに舞っていた頃とはまったく違う。一晩、舞い続け、酒も抜けきってしまったという感じ。それでもまだこれから2時間は舞わなければならない
 会場全体には、煮詰まったようにどろんとした空気が漂っていたが、30分ほどして、次の舞が始まると少し活気付いた。あたりが薄明るくなり、風景が変わる頃、ちょうど「戸取」という神楽が始まったのであった。天岩戸を開いて天照大神に再び出ていただき世の中が明るくなるところを演じるこの神楽には、まさにぴったりのタイミングであった。

【メモ】
●(資)福田酒造商店 熊本県人吉市西間下町137―2
Tel0966(22)2507
●有限会社林酒造場 熊本県球磨郡湯前町3092
Tel0966(43)2020
●神楽酒造株式会社 宮崎県西臼杵郡高千穂町大字岩戸144―1
Tel0982(76)1111
●高千穂町役場商工観光課 宮崎県西臼杵郡高千穂町大字3田井13
Tel0982(73)1212


月刊酒文化 2006年3月

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