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食でまちおこし
―御食国若狭(みけつくにおばま)食文化館
◆御食国若挟おばま食文化館のキッチンスタジオ 「豊かな自然を守り、食文化のまちづくりを進め、健康ともてなしの心を大切にします」これは小浜市民憲章の一節。人口約三・四万人の同市は、飛鳥・奈良の時代に朝廷に食を供給していた「御食国(みけつくに)」という歴史にちなんで、食のまちづくりを進めています。八章三三条からなる「食のまちづくり条例」を施行し、昨年、その活動の中心的な施設となる「御食国若狭おばま食文化館」(以下、食文化館と略)を完成させました。
この施設は「食文化体験ゾーン」「食工芸ゾーン」「濱の湯」の三つからなります。食文化体験ゾーンは、御食国の歴史や鯖(さば)や鰈(かれい)など若狭地方の食文化を解説する展示と食材加工を実体験するキッチンスタジオ。食工芸ゾーンは、この地方の伝統工芸(和紙・めのう・瓦・塗・箸)の匠たちの製作・実演があるほか、工芸品づくりを体験できます。濱の湯は若狭湾を一望できる温浴施設です。また、四月末に奥村彪生氏(伝承料理研究家)が監修した「お食事処 濱の四季」がオープンしました。
キッチンスタジオでは、小浜の食材を使って自分で調理し、召し上がっていただく調理体験や、鯖の押し寿司を押して持ち帰ることができるおみやげ作り体験があります。
箸の削り出しを実演。有料で箸とぎ体験もできる 順調に滑り出した食文化館の来場者数はオープンから半年で30万人。年間目標16万人を大幅に上回りました。内訳は、「食文化体験ゾーン」と「食工芸ゾーン」の利用者は 8〜9割が市外・県外の方、反対に「濱の湯」は九割が市内の方です。このデータからは、遠方からのリピート客の確保が重要で、インターネットなどを活用した定期的な情報発信が欠かせないと言えそうです。情報を創り出す企画力が勝負です。
同館の学芸員である河津朋美さんは、「先日まで『幾松(いくまつ)』をテーマにしたミニ企画展をおこなっていました。幾松は元祇園の芸妓で桂小五郎の妻です。彼女の肖像画、小浜の芸妓が使用した高枕・簪(かんざし)などの調度品などを別の施設で展示し、当時の食事を再現して『幾松弁当』と名づけて販売しました。大掛かりな企画展はまだなかなかできませんが、ユニークなものを実施していきたいと思います。
この辺には国宝級の仏像がたくさんありますし、ご当地出身の杉田玄白は『養生七不可(ようじょうしちふか)』を考案したりしています。こうした有形無形の郷土の資産を食に結びつけて読み解いていきたいですね」と話してくれました。
また、小浜はもともと地元の食への関心が強かったのでしょうかとの質問に、「そんなことはなかったと思います。でも、食のまちづくりがスタートしてから意識が変わってきているのを実感します。食文化館で調理実習したものが普段の生活に入り込んだり、若い方と年配の方の間で郷土料理を軸に交流が始まったりと、わりとうまく進んでいると思います」と答えました。
当然のことながら小浜市は食の教育にも力を注いでいます。その土地で生産されたものを食することがもっとも身体に良いという「身土不二(しんどふじ)」の観点から、食文化館・幼稚園・保育園・学校・公民館などにおいてさまざまなカリキュラムが用意されています。その取り組みが評価され「地域に根ざした食育コンクール2003」で「幼児(親子)調理実習」が、特別賞を受賞しました。
若狭の食文化と工芸を学んだ後は、海の見える風呂でくつろぎ、郷土料理でおいしい地酒を一杯。これに幾松のような芸妓さんが舞ってくれたら、最強の酒文化の観光拠点にな るのではないでしょうか。
(御食国若狭おばま食文化館tel 0770・53・1000 http://www.city.obama.fukui.jp/mermaid/
さて、これまでまちづくりの一環として観光振興に取り組み、そこに酒文化あるいは食文化が組み込まれる事例を見てきました。こうしたタイプの事例は各地に見受けられます。
どぶろくづくりが盛んだった遠野市で「どぶろく特区」が認められ、観光の目玉のひとつになってきているのは、このタイプと見てよいでしょう。最上級の山田錦の産地として格付けされている兵庫県吉川町(よかわちょう)が、山田錦の館を設置して農業と観光の振興に取り組むのも同様です。中国には、酒好きの少数民族といわれるミャオ族の暮らしを訪ねるというツアーもあります。ミャオ族は観光客を誘致するために、酒を強調した演出をしているのです。
(本誌1998年12月号「観光開発とミャオ族の酒文化」曽士才 参照)

広報施設から観光施設へ―沢の鶴資料館
「昔の酒蔵」沢の鶴資料館次に、酒造メーカーなどが単独で観光拠点づくりに取り組んでいる事例を見ます。九頁に酒文化観光施設を一覧に示しました。このなかから「昔の酒蔵」沢の鶴資料館を取り上げます。日本を代表する清酒の産地の灘にある本格的な施設です。
この資料館は、昭和53(1978)年に古い酒蔵をそのまま資料館として公開したのが始まりです。阪神・淡路大震災で倒壊したものの、3年半あまりの時間をかけて再建されました。柱や梁など元のものをできるだけ再利用して再建されただけあって、落ち着いた重厚な雰囲気が満ちています。派手な装飾はなく、伝統的な酒づくりをていねいに記録した骨太の展示です。ショップが併設され、そこで試飲もでき、英文のパンフレットまで用意され、入館料が無料であるにもかかわらず充実した施設です。
年間の来館者数は5万人ほどで、ここ数年ほとんど増減はありません。淡路島や有馬温泉に加えて、最近は但馬や丹波への日帰り旅行の途中に寄る方が多いといいます。外国人の来館者は約2000人で、中国・台湾・韓国・欧米など、さまざまな国から来館しています。
施設は素晴らしいものですが、採算がちょっと気になります。入場料は無料ですから収益はショップの売上だけです。このほかにコンサートなどの有料イベントを年に数回実施しますが、ほとんどは赤字が出ないだけと言います。これだけの施設を運営管理していくだけの収入があるか疑問です。
沢の鶴株式会社では「資料館は『灘酒の伝統を伝える』当社の顔」と位置づけています。広告宣伝であり、メセナ活動であり、シンボルとして社員のモラールを高めるための施設です。同社マーケティング室の肥爪敏之さんも、「当社は、今では工業地帯のような風景のなかにあります。かつてはのどかだったわけで、資料館にそれを遺している。会社のそばを川が流れていますが、長いこと美化活動に取り組んで、ようやくここまできれいになりました。20年ほど前は恥ずかしいほど汚れていました」と言います。
資料館に対するこうした考え方は、ほとんどの酒造メーカーに通じるものです。酒文化観光施設と呼んできましたが、こうした位置づけならば広報施設と言ったほうが正確です。
お客様をおもてなしして、自社やその酒類のファンになっていただくための装置です。問題は会社の業績が低迷した時です。そうなれば広報施設という位置づけの施設は維持が難しくなります。せっかくの施設を活かすよう、より厳しく取り組むのが理想でしょう。集客目標を高く掲げてさまざまな施策を講じたり、愛飲者のネットワークの拠点として活用したりして、独立採算の道を探ることを考えてもいいのではないでしょうか。
◆実際に使用されているように展示された酒ぶくろと桶 酒造工場が観光化して独立採算に成功している例は、小規模なワイナリーに多く見られます。新潟のカーブ・ドッチや栃木のココ・ファームなどは、ワイナリー内のショップとレストランが大きな収益源です。山梨の奥野田葡萄酒醸造は、「援農」と称して農作業のボランティアを募っていますが、これも体験型の観光化と言えます。必要に迫られてのことですが、こうした仕掛けが根強いファンを増やしています。
神戸市は、地域の観光振興の一環として、観光客が多い時期に、市内に点在する酒蔵を巡るバスを走らせました。安価な運賃で酒造資料館やメーカーのショールームを結びます。灘の酒蔵は徒歩で巡るには広すぎる範囲に点在しています。こうした仕掛けがある時に、集中的にイベントを実施したいところです。そうしたコーディネートをする第三者の登場が待たれているのかもしれません。
(「昔の酒蔵」沢の鶴資料館 tel 078・882・7788 http://www.sawanotsuru.co.jp

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