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社員杜氏の強み
−毎年、社員蔵で金賞を取られていますが、今では、こうすれば最高の吟醸が造れる、金賞が取れるという確固とした技術が確立しているのでしょうか。
「まだまだ、これで絶対というものはありません。試行錯誤しながら、毎年よりよいものを追求しています。すでに使っている機械も毎年社内で改良を重ねています。こうして培われた技術を吟醸酒以外にも応用しているのです。
それに私たちは四季蔵で、年中造りますから、普通の杜氏に比べるとはるかに経験量が多くなります。造りが止まるのは、オーバーホールする8月だけです。こうして、たくさんの本数を造るのでいろいろと冒険ができます。特に吟醸酒なんかは、普通の蔵では年に何本という量しか造らないのでしょうが、私たちは、何十本と仕込むので、それこそ新しい試みなども思い切って挑戦できる」
−製造分野の社員はどんなキャリアを積んでいくのですか。
「最低でも技術者として一通りのことをマスターするのに10年以上の経験が必要です。ジョブ・ローテーションとの関係もありますが、例えば、大手蔵ですと、大きい工場なので漠然としていて、酒造りの全体がなかなか見えてきません。そのためにも2〜3年毎に部署を移動していきます。
一方、昔ながらの酒造りをしている内蔵ですと、最初から最後まで、全員で協力して造る規模なので、酒造り全体を覚えるのは早い。一人前になるのは両方の造り方を経験してからということになりますね」
「大きな蔵で機械で造ることと、昔ながらの造りと両方を知ることに実は大変意味があります。
内蔵は、ものすごくクラシックな方法で吟醸酒を造っています。しかし、この技術にも熟達し、新しい方法と古いスタイルと両方を理解することで、機械で行う作業のひとつひとつの目的や意味が見えてきて、酒造りの原点が理解出来てくる。そのあたりについては若手の社員も目的意識がありますから、『夜中におきて醪をみておけ』とか『麹の状態を勉強しておけ』と言えば、ちゃんとやっている」

社内品評会での合格を目指して
−杜氏役を勤めての感想をお聞かせください。
「初めて内蔵で杜氏役を行ったときは、非常に緊張しました。いきなり、山田錦を使った大吟醸酒でしたから。もし失敗したらどうしようかとハラハラしました。内蔵では、高級酒主体に造っていますから、無事でき上がって、良い評価を得た時はほっとしました」
「私は、内蔵でやった後、北二号に移ったのですが、蔵癖にとまどいました。同じ蔵の中でも、場所によって夜中にグンと冷え込むタンクがあるのです。あやうく醪に風邪をひかせそうになりましたが、全員総出で防ぎました。
その時に感じたのですが、季節の杜氏さんは、蔵人の年齢も高いので、みんなの健康管理やチームワークの醸成など酒造り以外にもいろいろと神経を働かせていて本当に大変です。初めての蔵に行けばそこの蔵癖を掴むのにも骨が折れます。
我々の場合は前任者に聞いたり、データを見たり、酒造打ち合わせもある。困った時は大手蔵に行って相談すれば、大概のことは解決できます」
「灘工場は以前は季節杜氏の蔵だったのですが、震災後、建て直して社員で造るようになりました。当社は宮水は使っていませんが、最後に一本だけ宮水で仕込んだところ、湧くのも早いし進み方がずいぶん違った。水だけのせいか、気温も関係あるのかは、来年以降の課題になります」
−これだけたくさんの人が酒造りに関わる中で、これがうちの味だというのは、どのようにして決まっていくのですか。
「先ほども話に出ましたが、酒造打ち合わせという全体の会議が、杜氏さんの蔵入りの時と、酒造りが終わって帰る前の二回あります。ここでは、今年の米の特徴、精米や吸水などについて情報交換をします。また、営業や会社からこういう酒が欲しいという要望もありますから、そのためにはどうするかなど、様々なことが検討されます。
もちろん、途中でも情報交換は行っています」
「それから、最後に社内品評会があり、すべての酒を目隠しで評価します。当社の官能評価は厳しいですからここで一番を取るということが大きな目標で、大変誇りに思います」

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