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澤の井 東京
暖かみのある、感性を生かした酒造り
生酒のパイオニア
写真 こうした販売戦略の面だけでなく、酒造りでも同社は、早くから独自の取り組みを続けてきた。オイルショック後、スーパーなどが低価格の日本酒を扱いはじめたのを見て危機感を抱いた同社は、逆に高品質指向路線を明確化する。
「それで昭和52年に、生酒とか純米を出しはじめたんですね。そのときは、生酒は市場に殆んどありませんでした。難しかったのは、冷蔵庫で結露する、するとラベルがはがれちゃうんですよ。それから酒販店も今ほど冷蔵庫を持ってるところが多くないですから、無理に入れるとビールの隅のほうに入ってたり、陳列効果がゼロになっちゃうんです(笑)」(山崎副社長)
3年ほどするとナショナルブランドが発売するようになり、今では生酒は日本酒のジャンルの一つとして定着しているのはご存じのとおり。
また同じ頃、現在も主力の「純米大辛口」を発売。まだ甘口が主流の時代に、ウイスキーの水割りや焼酎などに対抗するという発想で辛口に手を染めるという戦略は出色だ。さらに、最近注目されている低アルコール酒もこの当時に手がけていたというからおもしろい。もっとも、東京サミットの晩餐会用として造られたという「ソフト12°」は、時代を先取りしすぎたのかわずか数年でお蔵入りになったという。
さて、こうした澤乃井の酒造りは、長く越後杜氏が担ってきた。杜氏の高齢化もあって3年前にその跡を継ぎ、現在杜氏を務めるのが取締役製造部長でもある田中充郎氏だ。
田中氏は都内狛江市で生まれ、国学院大学時代には奈良で墨作りを経験した。もともとモノづくりを仕事にしたいと思ってはいたものの、墨で食べていくのは難しい。それなら、酒を造るのもいいかと同社に入った。だから、社員杜氏とはいっても、醸造科などを出たわけではなく、同社に入ってから蔵人といっしょに杜氏の下で働くなか、酒造りを覚えてきたという変わり種だ。
吟醸用酒母室のエアコン操作パネルの前で田中氏は言う。
「これ、一見コンピュータ制御みたいに見えますでしょ。でもじつは手動なんです(笑)。確かにコンピュータのほうが楽。私は今でも、この前で温度設定をどうしようかと10分間立ちつくしたりしますから(笑)
でも、コンピュータ管理にしたら大手と同じ土俵に立ち入ることになる。うちみたいに小さな蔵では、管理する人間の感性を反映できなければだめだと思うんです。だから、澤乃井の酒という大本は残しつつ、細かなところは人が変われば変わる。若い衆は私の温度設定を見て、田中の温度曲線は大っ嫌いと思ってるかもしれませんが、それでいいんです。自分もそうでしたから(笑)」(田中杜氏)

洗練かつ暖かみのある酒を
同社のホームページに掲げられた「基本方針」には、こう記されている。
「お客様との直接のふれあいを求めて積極的に酒蔵見学を行い、澤乃井を取り巻く自然と酒造りに対する基本姿勢を訴えてまいりました」
酒蔵見学と澤乃井園のバーベキューからスタートしたこの方針は現在、「まゝごと屋」、同じ園内にあるわっぱ飯の「わっぱ屋蔵亭」、多摩川を挟んだ対岸にある「櫛かんざし美術館」、少し上流の玉堂美術館脇にある食事・喫茶の「いもうとや」と広範囲に拡がり、一帯は奥多摩観光の名所として知られている。ただ、事業の柱はあくまで酒造り。しかし、周辺施設が単なるPR媒体かというと少し違う。
「これからも、価値を評価していただける酒を造っていきたい。それはどういう価値かというと、人間性があるとか、暖かみがあるとか、やっぱりそういうことが大事だと思うんですよね。ですから、分析した数値で善し悪しということよりも、人の感性で善し悪しを決めていこうということです」(山崎副社長)
結局、化学的に分析し、同じ数値となっていても、飲んでみると味わいが違う。それが日本酒というものの難しさでありおもしろさだ。また、まったく同じ味わいの酒でも、飲むシチュエーションやその酒が与える雰囲気によって、受け取り方も変わってくる。つまり、田中杜氏の感性から生まれた酒そのものとともに、「まゝごと屋」や「櫛かんざし美術館」などの存在を含むイメージがすべて合わさって、「澤乃井」という酒を作り上げているということだろう。
では、「澤乃井」とは何か。やはりそれは、東京にありながら豊かな自然を持つ青梅の酒、ということに尽きるのではないか。都会の洗練と、山間の人の暖かさを兼ね備えた酒は、たぶん、そうはない。

小澤酒造株式会社
東京都青梅市沢井2-770
電話 0428(78)8215
FAX 0428(78)8195

※酒蔵見学は、1日4回1名から可。無料。要電話予約

お酒の四季報(2001年秋号)

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