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ポリシーあふれる酒造り
PBが拍車をかけた多品種化
だが、こうした急速な全国区化は、思わぬ弊害も引き起こした。
「地酒ブームをつくった『つうの酒』と地元向けに出していた一級酒はラベルが同じ。大手の問屋へ一度納品するとどこへいくかわかりませんから、流通の調整が取れず、混乱が起きてしまったのです。そこで、流通をコントロールするためにPBをスタートさせ、商品の多様化が進みました」(山川社長)
同社では基本的に、PBもブランドごとに造りを変える。中身は同じでラベルだけを変えるわけではないため、PBが増えれば増えるほど多品種少量生産化が進むことになる。
一方、山川社長が「趣味の世界」というように、一般米の新しい品種が出るたびに、その米を使った酒の試作を行う。また、時代時代の消費者ニーズをとらえた新しい酒の試作も随時行われている。
「三年くらい造ってみないと、商品になるかどうかわかりませんから、いつも売らない酒を二、三品種は造っています」(山川社長)
こうした中から、新しい銘柄が生まれ、PBと相まってどんどん数が増えていったのだ。
これには、「うまい酒を造る」という同社の創業以来の伝統とともに、確かに山川社長個人の資質も関係していよう。
山川社長は、酒造りに使う米は必ずしも「有機・無農薬米」である必要はないという。収量を上げるために無定見に化学肥料や農薬を使うのではなく、必要最低限の使用にとどめ、しかもその最低限しか使用していないという事実が、できれば第三者機関に保証されていれば十分だと考えている(もっとも、現在この条件を満たす米は少な
い)。
しかし、それでも同社で有機・無農薬米での仕込みを行っているのは、有機・無農薬米は、精米歩合を五%ほど上げるのと同じ効果があるのではないかという技術的な興味かららしい。

「酒づくりの道具化」を追求
多品種少量生産を効率よく行うために、同社は他の酒蔵と違った独特の設備を持っている。
まず、仕込みに使うタンクは六トン仕込(二三キロリットル)二三本、三トン仕込(一二キロリットル)三〇本、一・五トン仕込(五キロリットル)一九本、七五〇キログラム仕込(二・五キロリットル)二〇本。
そして、これらのタンクを使って、それぞれ使う米も、精米歩合も、洗米方法も違う、自社銘柄二八、PB二七、プラス試作品の仕込みが行われる。そこで混乱を避けるため、玄米の時点でどの銘柄の酒になるのかが決められ、そのラベリングが精米から仕込み、搾り、貯蔵まで各段階に付いて回るシステムを作り上げている。管理するのは、コンピュータだ。
しかも、洗米ら蒸し米までの間、米は同じ浸漬蒸米(しんせきむしまい)兼用タンク(甑こしき)で過ごす。作業が進むにつれ、中身を移動させるのではなく、常にタンクごと移動させられるよう、底にキャスターの付いた特製のタンクが使われている。
「現在蔵人は五三名いますが、平均年齢は六三歳。高齢化が進んでいますから、できるだけ体力的な負担が少ないようにしたいと思っています」(青柳尚徳製造部長)
そのため、蒸し米をスコップで堀り起こす作業にも、タンクごとひっくり返す、独自の機械が導入された。
蒸し米が終わった米は、モノレールで麹室へ。同社では現在も昔ながらの一升盛りの小さな麹蓋が用いられている。これは、大吟醸、吟醸などだけでなく普通酒も同じ。そして、明治一〇年代に建てられたという酒母蔵の中で酒母造りを行う。
搾りには圧搾機も用いられるが、昔ながらのふねも現役で活躍している。
そして何よりも特徴的なのは中・小容量を中心に二四〇本を超す貯酒タンクの多さである。二万石規模の蔵にしては非常に多い。コストや効率を考えれば大容量タンク主体となるところだが、このタンクの多さが多品種少量生産を支えているのである。
このように伝統的な手法・道具と独自の機械が融合し、同社のさまざまな酒が生まれていくのである。つまり、伝統に磨かれた技を残しながら、人間の労力を機械に置き換えることで無駄な労力の削減を図る。こうした製造システムを同社では「酒づくりの道具化」と呼ぶ。
「『人』ほど、フレキシビリティのある製造方法はありません。現在のような多品種少量生産は、機械化に頼らない、人間が造るという形だからできたんです」(山川社長)

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