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農醇な無濾過生原酒でおいしさを追求
機械化と手作りの二刀流
写真 ビール卸部門を切り離すことで財務体質を改善するのと並行し、同社は清酒メーカーとしての生産体制の整備にもとりかかっている。その方策のひとつが、清酒製造スタッフの社員化である。
「蔵人として若い子が来ても、『残念ながら来年から来れません』とか『結婚するから蔵に来れない』とか言われて(笑)、だんだん若い人たちが来てくれないようになりました。そして、来た当初は若かった人たちも、高齢化に伴い体力の低下が目立つようになってきました。越後だけは、杜氏さんも若かったからいまでも来てくれますが、南部からはとうとう来れないと言ってきました」(稲垣社長)
そのため同社では、10年ほど前から製造スタッフの社内養成を開始し、杜氏と蔵人による酒造りから、年間採用の社員マイスターによるそれへの切り替えが進められた。そして現在では、10年目から4年目の若手技術者が中心となって、酒を造る体制が徐々にできあがりつつある。
そのための設備の近代化も、漸次進められた。いまでは一般酒については、給水から蒸し、麹造りまで、すべて機械で対応しているという。「しかし、最初から完全機械化を目指していまの工場を作ったわけではないので、いろいろなところを創意工夫で行っています。たとえば米を蒸す段階では、昔なら重い米袋をかついで2階へ上げたりしていましたが、そこにエレベータを付けて作業が簡単にできるようにしました。
また、もともとの設計がそうなっていなかったので、精米工場と蔵とが離れているのですが、この間の数十メートルをパイプでつないで、米の移動を水とエアーで行えるようにしたり。こんな設備は、ほかでは見たことがありません(笑)」(年代忠秋製造部長)
一方、人手が必要な吟醸酒造りなどには、積極的に人材を投入している。たとえば、大吟醸「素心」の場合は、米を水に漬ける時もストップウォッチ片手に限定給水を行い、蒸し米にも昔ながらの木桶を採用するという徹底ぶりだ。麹造りも、特別な麹室を使い、昔ながらの手作業で行われる。
「手作業のよさは微妙な加減ができること」(年代製造部長)ということから、ブランドの名声を確立するためには、昔ながらの造りも若いスタッフが継承していかなければならない。
写真

濃醇「苗加屋」の挑戦
こうして製造体制を改善する一方、首都圏での販売戦略も大きく見直された。
きく見直された。その改革の旗を振ったのは、首都圏での販売を担当する松本峻取締役営業部長である。
「デパートで試飲販売などを行っていても、流行の淡麗辛口の酒では、どうしても名前の知られたほうが有利です。地方のメーカーとしては、どうしても別に、特徴のある酒を出していかなければならないと考えました」(松本部長)
そうして目指したのは「無濾過生原酒」
淡麗辛口ブームとは一線を画した濃醇な酒だ。その特徴を生かすため、大吟醸の無濾過生原酒というスタイルを採用する。タンク1本分の製造が決定されたのは、1998年のことである。
ブランド名も、従来どおり淡麗辛口路線を行く「若鶴」ではなく、江戸期に稲垣本家の屋号だった「苗加屋(のうかや)」を採用。1999年2月、720ml 250本限定で、東京市場でのテスト販売を開始した。
この「苗加屋」斗瓶囲い大吟醸無濾過生原酒は、デパートの催事でデビューするや徐々に人気を博し、11月には売り切れという予想を上回る成果を得た。
そこで翌2000年には純米吟醸、2001年に特別純米を加え、無濾過生原酒シリーズを定着させてきた。
特に特別純米は、富山県産の酒造好適米雄山錦を使い、日本酒度はマイナス1。淡麗辛口ブームに真っ向から挑戦した酒である。もっとも、数字的には甘口だが、酸度が高いぶんもったりした感じはなく、米と麹が香るおもしろい酒に仕上がっている。
このように、淡麗辛口一辺倒の風潮にあきた清酒ファンの心を掴んだ「苗加屋」は、若い人にも人気だという。いわば東京というマーケットのニーズを意識した新しい発想が、「苗加屋」の成功の最大のポイントだといえよう。
「松本部長が新しい視点の、うちの蔵としてはいままでなかったタイプの商売を始めてくれている。これからは、いわゆるセールスエンジニア、酒造りをちゃんと説明できるセールスマンで、しかも心があって、説得力があるような人たちを、前面に出していかないといけないと思います」(稲垣社長)
今後、清酒メーカーとしての本業に特化する方針の同社は、既存商品群の見直しも行なっている。大吟醸「素心」をはじめとした高級酒や純米酒への注力、地元の晩酌市場で人気上昇中の「辛口玄(げん)」の更なる拡大を意図している。
しかも同社には、過去から脈々と受け継がれる進取の気性がある。また、系列に北陸コカ・コーラボトリングという優良企業を持つのも大きなメリットだ。
21世紀に入り、「苗加屋」という新たな全国ブランドを手に入れつつある若鶴が、その名の通り全国に羽ばたく日も近い。

若鶴酒造株式会社
富山県砺波市三郎丸208
電話 0763(32)3032
FAX 0763(32)1251
お酒の四季報(2002年冬号)

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