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ぐるくん
安易な発想から始まった熱帯魚グルメツアーの夜
熱帯魚?を食べてみよう!
 エメラルドグリーンの海に囲まれた沖縄。その海にはたくさんの魚が泳いでいる。それならその魚を食べないわけにはいかない。沖縄料理もおいしいが、肉とか麺とか、チャンプル三昧では、お刺身とかさっぱりとしたものが食べたくなる。しかし、熱帯魚のような魚はおいしくない、という声をよく聞く。確かに本土では見かけない青や赤のきれいな魚が、おいしいそうかといわれれば……、食欲は湧いてこない。
 いずれにしろ、食べてみなければわからないということで、海鮮系の店を探してみた。新鮮な魚なら、港の近くがよかろうという安直な発想で那覇の泊港の近くの店に決定。その名も「ぐるくん」。ぐるくんは、沖縄の県魚だ。しかも、網元「ぐるくん丸」の店とくれば間違いはないだろう。

奇抜な外観!マグロ船をぶち込んだビル
 「ぐるくん」の店先、まず我々の目に飛び込んできたのは、4階立てのビルの1階からマグロ船の舳先が突き出ている光景。本物の漁船である。甲板、船体はビルの中にめり込んでいる。奇抜な光景だが、海の男の血潮を感じる。そしてなぜか心が騒ぐ。これならうまい魚にありつけそうだ。
 店内に入ると目に飛び込んでくるのは大きな生け簀。そして、壁をぶち抜くように船本体が、生け簀の上にそびえている。ビルに船をめりこませたというよりは、古い漁船の上にビルを建てたという感じだ。生け簀の中にはたくさん魚が泳いでいて、ここで釣りもでき、その魚が料理となって出てくるそうだ。
 我々が案内されたのは2階。階段を上ると漁船の甲板の上は調理場になっていた。その回りを取り囲むようにカウンターがある。壁面には、47社の泡盛の銘柄がずらりと並んでいた。席に座るや、その中から、今沖縄で人気があるという『残波』(比嘉酒造)を一合注文した。メニューを見ても魚の名前がよくわからないので、“近海魚の刺身盛り合わせ”と店員のおすすめという“ぐるくんの唐揚げ”を頼む。ぐるくんの唐揚げはステーキの焼き加減のように、揚げ方を「レア」、「ミディアム」、「ウエルダン」の3種類から指定できる。骨までバリバリ食べられる「ウエルダン」がおすすめだというのでそれにした。

極彩色の魚と巨大イカ
 まず来たのは刺身の盛り合わせだ。店員が皿の魚の種類を説明してくれる。それによると、まずイラブチャー。これがあの有名な青い色の魚だ。もちろん身は白いが。ブダイの仲間で、イラブチと呼ぶ人もいるらしい。そして、ミーバイ。こちらは赤色でハタの仲間。そして、沖縄付近の海洋深層水帯で獲れるというセーイカ(ソデイカ)。これは体調12キロほどの巨大なイカだという。身の厚さも分厚く、4センチはありそうだ。
 刺身はポン酢で食すのだそうだ。どれも身は淡白でくせがない。好き嫌いはあるが、それなりにおいしいといえるだろう。沖縄に来たら試してみてもいいのでは。

ウエルダンのぐるくんを頭から頬張る
 そして次が“ぐるくん”だ。ウエルダンで頼んだだけあって、見事に揚がっている。頭からガブリとかじりついた。ばりばりと問題なく食べられる。カサゴの唐揚に触感が似ている。これは文句なしにうまい! まろやかな味わいの残波ともよく合う。悦に入っていると、カウンターの中の大将が声を掛けてきた。
 「どう、ぐるくんうまいでしょ。これがぐるくんよ」といって、後ろを向き赤いTシャツの背中を指差した。そこに描かれているのは、小魚が群れて鯨の形を形成し、泳いでいる姿だった。そう、ぐるくんは和名を“たかさご”といい、中層を大きな群れで泳ぐ魚だという。だから、カサゴのような根魚とは、まったく違う種類の魚だ。どちらかというと鯵に近いかもしれない。

イカスミソーミンチャンプルーの恐怖
 この店は魚以外に、沖縄料理のメニューも豊富だ。その中で、我々が頼んだのは“イカスミソーミンチャンプルー”。その他のメニューは“ミヌダル”や“ウムクジプットゥルー”など、聞かないとどんな料理かわからない。酒が入って聞くのも面倒くさいので、以前食べたことがあるソーミンチャンプルーのイカスミ版、という想像のつきそうな料理にしたのだが……。
 そして、テーブルに運ばれてきた皿に我々の目は点になった。
 黒いのである。それも暗黒。イカスミだから黒いのは当たり前なのだが、想像していたよりはるかに黒いのだ。
たとえば、イカスミパスタを想像していただきたい。黒いのだけれど、ところどころパスタの白い肌が想像できるような色の淡いところがあるものだ。そして、どんな具が入っているのか、視覚でおおよそ確認できるはず。ところが、これは違う。ひたすら黒い。想像が間違っていなければ、玉ねぎやイカなどの具も入っているはず。それがまったくわからない。箸でつまんでも自分は何を取ったのか想像もつかないほどだ。食べてみると、それなりにおいしいのだが、人間の味覚がいかに視覚に頼っているかを思い知らされた。これは玉ねぎだと思って食べるから、玉ねぎの味がするんだ、と。
 思うに、イカスミがたっぷり過ぎるのではないか。よくいえばイカスミをケチっていないのだ。きっとさっき刺身で食べたセーイカである。12キロのイカのイカスミってどれくらいの量なのか。1リットルくらいあるかもしれない。そのたっぷりのイカスミであえてあるのだ。「これはセーイカの逆襲かもしれないな」などと話ながら、こちらを向いた連れ合いの口は、見事に真っ黒に染まっていた。

サービス満点の酔っ払いの大将
 泡盛を何本かおかわりし、つぎに何を頼もうかと選んでいて目に止まったのが「山原くいな」だ。もちろん飲んだことはない。頼んだ理由はただ酒の名前が面白いから。泡盛は名前だけを見ていても楽しい。沖縄県だけで50カ所近くの酒造所があり、銘柄となれば、何百種類にもなるだろう。笑える名前もあって、ネーミングの面白さで頼むのも、泡盛の楽しみ方のひとつだ。
「大将、山原くいな一合!」
「あいよ!」と、大将は威勢よく応え、一升瓶からカラカラに溢れんばかりに注いでくれた。
 サービスがいい。これが沖縄の心意気だ、と思ってるのも束の間「そのグラスも空けちゃいな」と、私の前のグラスをあごで指す。言われるままにグラスを開けると「もう少しでこの瓶空いちゃうからさ」といって、グラス7分目くらい、どぼどぼと注いでくれた。そして「そっちの兄ちゃんも」と、結局3人のグラスは山原くいなのストレートが注がれていた。太っ腹だ。結局一合の注文に対して、三合はサービスしてくれたのではないか。こういうサービスはのん兵衛にはうれしい。
 「いやー、今日は偉いお客さんがきて、飲まされちゃって」と、大将は上機嫌。観察しているとろれつがまわっていない。つまり、この人は酔っ払っていたのだ。今度は、カウンターの下からみかんを出して、次々にくれる。
 ――酔っ払いの大将のサービス攻勢に少し閉口しながら、沖縄の魚を堪能する夜はふけていくのだった。

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