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近鉄奈良の駅前から山村町(やまむらちょう)行きのバスで終点まで。東へ一時間あまり歩いて、なだらかな坂を登りつめると、そこは正暦寺である。紅葉の名所として知られ、古人はここを「錦の里」と名づけた。かつて奈良酒とも南樽(みなみだる)とも呼ばれた菩提泉酒を醸したのは、坂の脇を今なお澄んでせせらぐ菩提仙川(ばだいせんがわ)の水だったという。
正暦3(992)年の創建で、平安の末に平重衡の南都焼討ちにあって全焼したが、鎌倉末に再興され、以後隆盛をきわめたと伝わる。
この寺と清酒のゆかりについて、神崎宣武さん(酒文化の会会員)の『百姓(ひゃくせい)の国』(1995年、河出書房新社刊)から引用させていただく。−「中世において、正暦寺で酒が造られていた事実は、『多聞院日記』、『大乗院寺社雑事記』、『経覚私要鈔』などの文書によってすでに明らかである。いわゆる寺坊酒であり、それが正暦寺の経営基盤となり、14世紀から15世紀にかけての正暦寺は、塔頭(たっちゅう)八十数寺を抱えるほどの大寺となった。正暦寺が財力をもつということは、その上部寺の大乗院(だいじょういん)さらにその上部寺の興福寺(こうふくじ)があがり徴収して潤うわけで、その『壺銭(つぼせん)』について右の文章群がふれている。いまでいう酒税を上納するほどに正暦寺の酒造りは盛んであったのだ」
執事の大原弘信さんに尋ねた。
−昔の菩提泉酒のことはよくご存知だったと思いますけれど……。
「いや、じつはですね、今の日本酒がこの寺で始まったということは、正直言って知らなかったんですよ」
−へえ、じゃあ、いつ?
「昭和61年だったと思いますが、この寺から6キロほど離れた横田(よこた)というところから安川酒造の安川さんが来られまして、『昔の酒を造りたい』とおっしゃったんですが、それからです、この寺と酒のかかわりについてちゃんと知りましたのは」
たしか安川酒造で『菩提泉』が出来上がったのは昭和63年とか。
「そうです。その年がちょうどこの寺の創建千年でしたので、記念に何かということもありましたし、安川酒造の水ならここと同じ水系だろうと考えたこともありましたが、何と言っても安川さんの熱意ですね。そこにいろんな縁が重なって『菩提泉』が生まれたんです」
中世の醸造法で復原されたお酒の原酒がどういうものであるか、再び神崎さんの本から。−「二年ものの酒ということで、ちょうどウイスキーのごとく琥珀色に染まっていた。いかにも芳醇で濃厚な色あいである。口に含むと、甘味と酸味が相乗して鼻孔を裏から強く刺激する。何ともいい表わしがたい強烈な味である。が、なるほどこれが古き旨し酒か、と納得せざるを得ないところがある」
現在市販されているのは、この原酒を薄めたものだが、以来七年の余、お酒が苦手だった大原さんも、今ではおいしさがわかってきました、とおっしゃる。夕食の卓上に『菩提泉』とお造り(刺身)があればゴボウのきんぴらとお浸しで充分とか。
「酒というのは日本の米の文化の集大成だと思います。最高の〈作品〉と言いますか。それをひょんなことから造ってもらえたのは、とても嬉しいことです。ですから飲んだくれのためではない、寺(やま)の風味とともに楽しみ喜ぶための酒は大歓迎です」
大原さんの理想の寺は〈遊びと寛くつろぎの空間〉〈お酒を含む食を通して、歓談しながら心をかよわす場所〉〈文化や歴史に触れる所〉である。だから、寺を通るだけで心が解放されるような寺を作りたい、そのためにはいい坊さんがいつも寺にいなければいかんのです、と言う。42歳のつるつる頭の心意気が名水のようだったといえば、言いすぎか。

杉玉ただいま800個
桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)(三輪明神)は酒の神様として知られている。
祭神の大物主(おおものぬし)とお酒がどういうつながりがあるのか……などは民族学や言語学、宗教学のセンセイにお聞きするとして、ゆかりの杉玉(すぎだま)(もしくは酒林(さかばやし))は、ご神体の三輪山から伐り出した杉の葉を丸く束ねて奉納し、一年間拝殿にぶらさげられるものである。そして、そのミニチュアが、新酒を献じた各蔵元に「しるし」として下げわたされる。最近では毎年800のミニ杉玉が作られるそうだが、予約して実費(2〜3万円)を払えば誰にでも宅配便で送ってもらえるそうだ。
杉の葉のびんと戦(そよ)ぐや新酒樽 一茶
●大神神社●桜井市三輪
神社●桜井市三輪〈07444(2)6633〉

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